2016年7月5日火曜日

【小ネタ】 J1クラブのコストパフォーマンス、資金豊富な名古屋と浦和

【小ネタ】 J1クラブのコストパフォーマンス、2006年から2014年まで」に、各クラブの人件費に対する、勝点と人件費の比(人件費一億円で獲得できる勝点)のグラフを載せました。

このグラフを見ると、人件費の一億円でどの程度の勝点を獲得できるかが、一目瞭然です。

結果として、人件費の高いクラブほど、人件費の一億円で獲得できる勝点が少ない傾向にある事が分かりました。

つまり資金豊富なクラブは、コストパフォーマンスとしてはよくありません。

今回の記事では、J1クラブの中でも資金豊富な名古屋と浦和について、勝点と人件費の比の年変化を調べました。





J1在籍経験のあるクラブを、人件費の規模別にグループ分けしました。今後、それぞれのクラブの勝点と人件費の比の年変化を紹介します。
  • 20億円前後、名古屋、浦和。
  • 15億円から20億円、鹿島、柏、横浜、G大阪
  • 15億円前後、FC東京、川崎、大宮、磐田
  • 10億円から15億円、広島、清水、神戸、C大阪
  • 10億円前後、新潟、仙台、甲府
これらのクラブは、2006年から2014年までに5シーズン以上、J1に在籍したクラブです。



名古屋の勝点と人件費の比の年変化

名古屋グランパスエイトの年度別成績一覧 (Wikipedia)

人件費の単位は100万円です。

【小ネタ】 名古屋と2014年のJ1クラブのコストパフォーマンスで、名古屋の勝点と人件費の比の年変化をお見せしました。

これに加え、勝点と人件費の比について、全クラブの年平均値をプロットしたのが、以下の図です。


この図を見ると、年平均値が波打つように変化している事がわかります。

名古屋の勝点と人件費の比は、順位が良かった2008年(3位)、2010年(1位)、2011年(2位)では3前後です。

ただ、年平均と比べると、2008年と2010年が年平均と同等、2011年の名古屋の値は年平均より小さい事が分かります。

この波打っている年平均値で、名古屋の勝点と人件費の比を割った値(<勝>)が、以下のグラフです。


ひどい時(2006年と2013年)は、名古屋の勝点と人件費の比が、年平均値の0.5倍ほどになっています。

各年の人件費を比較するため、人件費を、その年の人件費の平均値で割った値を、<人>とします。

以下は、縦軸を<勝>、横軸を<人>にしたグラフです。


名古屋の人件費は、人件費の年平均値に比べ、最低でも1.15倍(2007年の18億円)、1.5倍前後(20億円超)が普通です。

成績が良かった年の<勝>は1程度ですが、人件費とはあまり関係ないようです。



浦和の勝点と人件費の比の年変化


人件費の単位は100万円です。

浦和についても、勝点と人件費の比を、年平均値で割った<勝>を計算しました。

以下のグラフが、その年変化です。


2011年までに緩やかに減少し、その後、また増加に転じています。

2011年は、最近の浦和の成績では最も悪い15位でした。

その後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を招聘し、成績が回復しています。

名古屋と同じように、<勝>は良くて1程度、悪い時は0.5です。

次に、名古屋と同じように、縦軸を<勝>、横軸を<人>にしたグラフです。


右端の2点は2006年と2007年で、2006年の人件費は約25億円で年間成績1位、2007年は28億円をかけて2位(ACL優勝)でした。

Jリーグで最大規模の人件費をかけ、好成績を収めましたが、コストパフォーマンスは1未満でした。

2010年まで20億円以上が続き、成績の悪かった2011年は18億円、その後20億円程度になっています。

最後、浦和と名古屋のグラフを重ね合わせてみました。


両チームとも、大体似たような範囲に収まっています。



解釈

色々考えましたが、見識の足りない私にはこれらの事実がよく理解できませんでした。




上記のグラフで大事な事は、資金豊富な名古屋と浦和が優勝しても、勝点と人件費の比の年平均値を超えられない事実です。

つまりこれらのチームに所属する多くの選手達は、優勝(上位入賞)してようやく人件費に見合う働き、他チームと同等の働き、ができたのであり、それ以上の事をした訳ではありません。

名古屋と浦和が好成績を過去に収めた事は、フロントやサポーターからすればとても嬉しい事です。

しかし、それが選手達の利益になるか、ステップアップにつながるかと言えば、全くの別問題です。

あるクラブの勝点と人件費の比がその年の平均値を超えられないなら、優勝したとしても、リーグ内の他のクラブや海外クラブから移籍の誘いを受ける選手達(つまりお買い得な選手達)は多くないでしょう。

優勝したチームの選手達ならば、活躍していないとは言いません。考慮する要素も色々あるでしょう。しかし、年俸以上の活躍を見せた選手達は多くないでしょう。

つまり、ここ9年間の名古屋と浦和は、選手達がキャリアを積む上での行き止まりとなっています。

資金豊富なクラブが、キャリアの行き止まりとなっている現状は、Jリーグにとって大きな損失です。



このような、資金豊富なクラブのコストパフォーマンス(勝点と人件費の比)が悪い理由はいくつか考えられます。

  1. 監督変更後のチーム戦術構築のために時間がかかる事、あるいはその失敗の連続。
  2. 実績のある選手達にありがちな年俸の高騰。
  3. フロントの迷走による人件費の浪費。
  4. その他。

ただ、これらの理由は資金豊富なクラブだけに起きる訳ではありません。

1と3の理由は、他のクラブでも起こりえます。

2は、資金規模の小さなクラブにはあてはまらないでしょう。

しかし、資金規模の小さなクラブで活躍した選手達は、より資金豊富なクラブへと引きぬかれます。

選手達を引きぬかれたクラブは、現金を手に入れますが、新しい選手達が早急にチームにフィットする保証はありません。

にも関わらず、名古屋や浦和よりも資金規模の小さなクラブは、より少ない人件費で多くの勝点を手にしています。(失敗したクラブはJ2へと落ちていきます。)

名古屋や浦和には、何が足りないのでしょうか?



にほんブログ村 サッカーブログへ
クリックして頂けると励みになりますm(_ _)m


J1クラブのコストパフォーマンスについての記事一覧

7/14, 名古屋と浦和の表を追加。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿

サッカーにおけるボロノイ図使用の制限、ボロノイ図とは?

本記事の主張は、「 サッカーではボロノイ図を無制限に信頼しないでね 」、です。 特に私が危惧しているのは、盲目的な信頼によって、ボロノイ図が選手批判に使用される事です。 事実として、選手たちが動いてない時(動きが悪い時)ほど、ボロノイ図は各人がカバーできる領域に近くなり...