2016年6月21日火曜日

【小ネタ】 名古屋と2014年のJ1クラブのコストパフォーマンス

前回、「【小ネタ】 勝ったのは誰だ? 2014年 J1」という記事で、営業費用と営業損益の比勝点と人件費の比を使って、クラブの金銭面での成功を定量的に調べました。

この記事の内容は、次の2項目です。

1. 名古屋についてのこれらの比の時間変化。
2. 2014年のJ1クラブの人件費に対して、勝点と人件費の比を並べた分布図。


名古屋の各比の時間変化



これらのグラフが、名古屋の営業費用と営業損益の比と、勝点と人件費の比の年変化です。

営業費用と営業損益の比は、マイナスの値が目立ちます。2006年から2014年までの営業損益の積算値は-6億円でした。

営業損益がマイナスなのも問題ですが、その一因は、観客とスポンサーを集めるためのクラブの活躍具合です。勝点と人件費の比は、人件費に見合う活躍ができたかどうか(チームが機能したかどうか)を明確に示します。

名古屋は08年に3位、10年に首位、11年に2位となっており、他の年は「中位」と呼ばれる10位前後の順位です。成績が振るわない年には、勝点と人件費の比もよくない事は予想できます。

勝点と人件費の比のグラフでちょっとショックだった事は、2010年前後の好成績の期間でさえも、勝点と人件費の比が3前後だった事です。「【小ネタ】 勝ったのは誰だ? 2014年 J1」で、勝点と人件費の比のグラフをお見せしましたが、平均値は3.2でした。

この平均値が例年と同程度だと仮定するなら(大きく異なるとも思えない)、名古屋は、好成績を収めた期間、人件費に見合った程度の働きをしていた事になります。2014年の甲府、新潟、鳥栖のように、人件費に比べて高い活躍をした訳ではありません。

もし名古屋(資金の豊富なクラブ)が人件費以上に機能したなら、圧倒的な成績で優勝出来ていたでしょう。


人件費に対しての勝点と人件費の比


これが、人件費を横軸、勝点と人件費の比を縦軸にした、2014年の結果です。一目で分かる傾向として、一つだけ外れた点(徳島)を除くと、人件費の高いクラブでは勝点と人件費の比が低く、人件費の低いクラブでは勝点と人件費の比が高い事が分かります。

これは、Jリーグが順位予想の難しい戦国時代である事を示していますが、見方を変えれば、資金の豊富なフロントが、チームを機能させられない事を示しています。つまり、幾ばくかの資金は無駄になっています。

さらに選手達のキャリアも無駄になっている可能性があります。資金の少ないクラブで活躍し、資金の豊富なクラブに移籍しても、そのクラブがチームとして機能していなければサッカー選手としての時間が無駄になってしまいます。

サッカー選手としてのキャリアの積み方の一つは、より高い給料を払ってくれる、資金豊富かつ成績優秀なクラブへの移籍ですが、現在のJリーグは、このキャリアの積み方がおかしな事になっています。

Jリーグの資金豊富なクラブのいくつかは、巨大企業をスポンサーにしています。フロントの人事、サッカークラブとしての能力不足、豊富な資金、色々な恩恵と弊害が想像できます。

そういったクラブのあり方はともかくとして、今後のJリーグの発展のためには、資金の豊富なクラブが人件費以上の成果を出す事(出し続ける事)も、過程の一つとしてありえるでしょう(ビッククラブの形成)。そのためには、フロントがより優秀になる事が必要です。

選手同士の連携が必要なサッカーでは、数年がかりのチーム作りも珍しくありません。したがって、この年のデータが資金の豊富なクラブの過渡期を示しているかもしれませんが、それにしてもきれいな傾向です。




今回、勝点と人件費の比という相対的な指標を使って、各クラブチームの機能の程度を評価しました。ただ絶対的な評価ではないため、ここで紹介した名古屋や他の資金の豊富なクラブが十分にチームとして機能している可能性もあります。ただ、資金の少ないクラブが、資金の豊富なクラブよりも機能している事実は変わりません。

今回、2014年のデータ、名古屋のデータを載せましたが、次回は他の年のデータの分析結果もお見せします。




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