2016年5月4日水曜日

【小ネタ】 プレミア、ブンデス、J1のスプリント回数について

元ネタのページ

Football Channel、データが提示する厳しい現実。Jリーグの試合に“迫力”がない理由【データアナリストの眼力】 (2016年2月6日)

soccer-db_2014さん(Soccer D.B.管理人)のブログ記事、スプリント回数を安易に他の大会と比較するのは危険 (2016年2月7日)



今回の投稿の元ネタは、この2つの記事です。Football Channelさんの記事では、ブンデスリーガとJリーグの走行距離とスプリント回数が比較されています。soccer-db_2014さんの記事では、定義が違えば、両者の比較は無意味ではないかという疑問が示されています。ここに至って、

  • Jリーグ以外のスプリントの定義はどうなっているのか?
  • そもそもどうやって速度を計測しているのか?

という疑問が湧いたので、調べてみました。


トラッキングデータから導出された速度

前回の記事(【小ネタ】 トラッキングデータの計測方法)に書いたように、トラッキングデータとは、各時刻における位置座標データの事です。ボールと選手達の移動速度は、これらの位置座標の時間差分をとる事で求められます。

なんのこっちゃと言うと、ある時刻t1において永井選手が位置Aにいました。その後、時刻t2の永井選手は位置Bにいました。この位置AとBの距離を、時間差(t2-t1)で割ると、その間の移動速度が出ます。この速度は、時刻t1とt2の中間の時刻の速度、と言えます。

このように、どのリーグであれ、ボールと選手達の移動速度は機械的に計算されます。これによって、例えば、横軸を時刻、縦軸を速度にした折れ線グラフを作る事ができます。あとは、スプリントの定義によって、スプリント回数が求められます。

各リーグのスプリント回数

前提1

データスタジアム社のトラッキングシステム(サッカー)のページのページによると、イングランド・プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガもJリーグと同じトラッキングシステムを採用しています。

前提2

プレミアリーグのスプリントの定義、25.2km/h以上。

参考記事、skySPORTS, Premier League sprint stats: Arsenal’s Aaron Ramsey tops the list。「england premier league sprint definition」でGoogle検索して出てきた最初の記事です。他のいくつかの記事でも同様の定義が使われていました。

前提3

ブンデスリーガのスプリントの定義、14.4km/h以上で2秒以上、あるいは22.7km/h以上で1秒以上。

参考記事、フランクフルトのフォーラムでの議論の#12、`ElzerAdler 27.8.12 01:26'の引用(Zitat: )以下の部分。「bundes liga sprint definition」でGoogle検索して出てきた2番目の記事です。2012年の記事です。

なお、末尾の追記も参照して下さい。

前提4

Jリーグのスプリントの定義、24km/h以上。(jleague.jp)

定義の比較

プレミアリーグとJリーグの場合、スプリントの定義が一定速度以上となっているので、一瞬でも、ある時刻のみでも移動速度が一定速度を超えれば、スプリントとしてカウントされます。一方、ブンデスリーガは、持続時間の制限があり、かつ2段階の定義です。soccer-db_2014さんがブンデスリーガのデータでとまどったのは、この定義が原因だと思われます。

スプリントの定義としては、ブンデスリーガの定義の一つ(22.7km/h以上で1秒以上)の方が、プレミアリーグやJリーグよりきつい気がします(同じトラッキングデータに対して計測したら回数が少なくなりそう)。ただ、14.4km/h以上で2秒以上という定義もあるため、結果としてブンデスリーガのスプリント回数は多くなりそうです。これを加味すると、Football Channelの記事はどうなるんでしょうね?

この14.4km/hという数字は、以前の記事に書きましたが、ランニングの速度(12km/h)よりも若干速い程度です。この数字をスプリントとして遅いと見るか、十分と見るか?

プレミアリーグのスプリント回数、本当なの?

とりあえず、プレミアリーグとJリーグの定義はほぼ同じなので、レスターの岡崎選手が72分で86回のスプリントをした事(Daily maleの記事)や、プレミアリーグでリバプールが614回のスプリントをした事(Goal.comの記事)は、直接Jリーグの数字と比較できるはずです。

2016年の第9節終了時点で、J1の1試合における1チームの平均スプリント回数は170回です。リバプールの614回という数字が、選手達を走らせるクロップ監督の効果だと考えても随分差があります。

岡崎選手のスプリント回数を参考にすると、理由の一つが守備の激しさ(寄せの速さ)なのは間違いないと思います。かなり安易な推測ですが。そういった守備のためのスプリントと、スペースへのスプリントが相まって、このような回数になっているのでしょう。色々と考えさせられる違いです。



まとめると、定義をよく調べてからスプリント回数を比較しましょう、というお話でした。

100歳以上のプレミアリーグは、激しく走る方面に進んだ訳ですが、これから30歳を目指すJリーグはどう進化していくのでしょうか?スプリント回数はサッカーの重要な一部ですが、全てではありません。



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2016年5月4日、12時、文面を若干修正しました。
2016年5月5日、追記、bundeslliga.comから質問したところ、この定義でよいとの事です。【小ネタ】 ブンデスリーガのスプリントの定義に、頂いたドイツ語の定義を載せています。
随時、文面を若干修正。



トラッキングデータとスプリント回数についての記事一覧

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