LIVEトラッキングって、何?
2015年シーズンから、jleague.jpでは、「LIVEトラッキング」と呼ばれる試合の実況中継を、各節に一試合だけ行っています。jleague.jp > ニュース > 【Jリーグ】「LIVEトラッキング」サービスを開始 (2015年3月6日)
LIVEトラッキングのページでは、選手達のフィールド上の位置をリアルタイム(ストリーミング配信)で表示する事に加え、走行距離、スプリント回数、最高速度などが随時更新され、選手ごとに表示されます。色々な魅力、使い方があると思います。ただ、「jリーグliveトラッキング」の検索結果を見ると、「LIVEトラッキングが~」という記事は多いですが、LIVEトラッキングを活用して「今回の試合は~」という投稿・記事はあまり見られません。
この選手全員の位置表示はリアルタイムで配信されていますが、試合終了後にも動画を閲覧できます。
LIVEトラッキングは、どう使えるのか?
LIVEトラッキングには以前から興味があり、どう使えるのか、(単にスプリント回数ではなく、サッカーの)何が分かるのか、などの疑問がありました。今回、私ならどう使うか、どんな情報を引き出すかと考えました。とりあえず出来そうな事は、TV画面に出てこない(スタジアムの人間の視野に入りきらない)選手達の動きの詳細な解説です。今回、J1第11節(2016/5/8)の柏対川崎Fの得点について、スカパーの動画とLIVEトラッキングの動画を見比べました。この試合では4ゴールが記録されましたが、今回チェックする得点は、前半15分のエドゥアルドネット選手(川崎21番)のゴールです。
- 柏対川崎FのLIVEトラッキングのページ
LIVEトラッキングの動画は、LIVEというだけあって、後から動画を見る事を考慮してないのでしょう、LIVEトラッキングの動画には時刻表示がありません。(実況中継の音声は入っています。)したがって後から見る場合、動画中の試合の開始時刻を記録しておいて、試合時間を推測する必要があります。今回の試合のトラッキング動画では、動画の12分56秒ごろから選手達の位置表示が始まります。
トラッキング表示画像。柏ゴール前の大久保選手(川崎13番)にパスが出て、それを増嶋選手(柏5番)が奪ったあたりの時刻。ところで、この画像、何かおかしいと思いませんか?違和感を感じませんか? |
エドゥアルドネット選手の得点
この得点では、エドゥアルドネット選手がペナルティライン付近からシュートを突き刺しました。シュートに到る一連のボールの流れを、LIVEトラッキング動画の再生時刻を使って説明します。- 26:15~、柏がサイドにボールを出し、さらに川崎側のコーナー付近のスペースにパスを出す。しかし、このパスはゴールラインを割り、川崎ボールになる。
- 26:30~、自陣ゴール前のパス回しから、川崎が柏のプレッシャーをかわして、柏陣内に進入。
- 27:01(27:45)~、川崎から見て右サイドに流れた中村選手(川崎14番)が、ペナルティエリアに進入するエウシーニョ選手(川崎18番)にパスをだす。そして間髪入れず、ゴール前の大久保選手へパスが出る。しかしここは柏の増嶋選手が大久保選手の前にうまく身体を入れて、シュートチャンスを潰す。
- 27:10(27:55)~、ボールを奪った増嶋選手が、センターサークル付近にいる大津選手(柏10番)にパス。これを、大津選手の後方にいたエドゥアルドネット選手が走りこんでインターセプト、そのままドリブルでペナルティエリア付近まで運び、柏の選手達が寄せる前にシュート。
- 27:18、ゴール。
途中のカッコ内の時刻は、スカパー動画での時刻です。エドゥアルドネット選手は、川崎ゴール前の時点ではスカパー動画に映っていましたが、その後、ボールが柏ゴール前まで移動する間は映らず、柏ゴール前からボールが出された後に、大津選手の背後から走りこんで来ます。
ボールが柏陣内に移動する間、ボランチのエドゥアルドネット選手は、CBであろう川崎の奈良選手と車屋選手の前で、大津選手を伺うようにゆっくり移動しています。この動きが功を奏し、インターセプトする事ができました。
他の選手達の動き
エドゥアルドネット選手の動き以外に、このゴールの原因は3つあります。- インターセプトされたパス。
- ぽっかりと空いたスペース。
- エドゥアルドネット選手のシュート。
まず、1についてです。センターサークル付近には大津選手がいましたが、後方に居たエドゥアルドネット選手に気づいていなかったのでしょうか?大久保選手へのうまい守備を見せた増嶋選手ですが、大津選手の足元にパスを出すよりも、カウンター狙いのスペースへのパスを出すか、もっと強いパスが必要な場面でした。増嶋選手は、大津選手を確認してからパスを出しているようなので、これは増嶋選手が大津選手の周囲まで確認できなかった、という事でしょう。
柏のGKと、前線に残っているオリヴェイラ選手(柏11番)と大津選手を除けば、スペースを埋められる位置にいたのは伊東選手(柏14番)でした。伊東選手がいた位置はペナルティエリアからは少し離れており、その時の守備としては死兵のように見えます。ただ、当然ながら攻撃に移る際には、有効なポジションでした。伊東選手も守備に戻るべきだったのかどうか、チームの約束事とか気になります。
また、エドゥアルドネット選手が走りこんで来た場面をスカパー動画で確認すると、伊東選手はあとちょっと近かったら、エドゥアルドネット選手を止めに入る事ができそうな微妙な位置でした。結果的に今回のプレーでは、伊東選手の位置は本当に微妙でした。ただ、伊東選手については、ボールが川崎陣内にある時に、ゴールライン際までボールをしっかり追いかけてた事を明記しておきます。そこでボールが取れてたら、川崎の勢いを止められ、かつ得点もあったかと思いますが、残念。
ちなみに、この一連の攻撃の間、スカパー動画では分かりませんが、トラッキング動画では、伊藤選手の背後に川崎の2番の登里選手が背後霊のように貼り付いている事が分かります。こういう川崎の2次攻撃のための準備が、ゴールに結びついた印象です。
最後に3についてです。最後のエドゥアルドネット選手のシュートの場面、右サイドに寄っていた柏の守備陣を避けるように左サイドを目指してドリブルし、そして柏の守備陣に寄せられる前にシュートを決めました。素晴らしいタイミングでした。
サッカーのフィールドは広く、一方で人間の視野が限られているために、一人で選手達の動きの全てを確認し、プレーの成功と失敗の原因を理解する事は困難な時もあります。しかし、今回のようにトラッキングデータ(動画)と、TV放送を組み合わせれば、一般の方々でも、より深くプレーを理解する事ができそうです。
ただし、何度も見直すのはしんどいです(´・ω・`)。動画にも早送りと早戻し機能が欲しいです。
トラッキング動画の画像
上のトラッキング画像、どこがおかしいのか、気づかれましたか?正解は、「フィールドが広すぎる」です。
エドゥアルドネット選手のゴールの前に、中村選手→エウシーニョ選手→大久保選手、というボールの移動がありました。このトラッキング動画を見ていると、エウシーニョ選手はペナルティエリアの角付近に走り込んでいるのですが、スカパー動画では、ペナルティエリアの角からずいぶん離れた内側を走っています。なんでだろう?と思って、トラッキング動画を見直すと、センターサークルとペナルティエリアの大きさに違和感が。
センターサークルとペナルティエリアの大きさ、およびゴールサイズなどは、規則で決まっています。ただ、サッカーの競技規則では、フィールドの大きさ自体には幅を持たせています。ゴールラインの長さとペナルティエリアの大きさ、さらにペナルティエリアの幅と色が異なる芝生の間隔、を考慮するに、このトラッキング動画の画像は、120m×90mのフィールドを想定しているようです。競技規則にある最大の大きさです。うろ覚えな記憶で「フィールドの広さは幅があったから、しょうがないなぁ」と思っていましたが、なんか事情は違うみたいです。
「Jリーグ ピッチサイズ」の検索結果
ワールドカップや他の国際大会に対応するため、Jリーグでもフィールドの大きさは規定されています。105m×68mです。恥ずかしながら知りませんでした。という訳で、トラッキング動画の画像は修正して欲しいです。
ブログなどでの簡単な活用は難しいですが、クラブレベルでのプレーの分析、選手達のオフ・ザ・ボールの動きを確認しようという時にはすごく便利なツールなんでしょうね。真面目にプレーを解析するぜ、という一般の方にはとても有益です!高校生、大学生のサッカー部の方とか、研究してみてはどうでしょう。
クリックして頂けると励みになりますm(_ _)m
ワールドカップや他の国際大会に対応するため、Jリーグでもフィールドの大きさは規定されています。105m×68mです。恥ずかしながら知りませんでした。という訳で、トラッキング動画の画像は修正して欲しいです。
まとめ
最初の方で、LIVEトラッキングを活用して「今回の試合は云々」という投稿・記事は少ないな~、と書きましたが、そりゃ少ないはずですわ。情報量が多すぎて、気軽にブログや記事に書けません。私も最初は柏川崎戦の4ゴールを全て調べようと思っていましたが、無理でした。「小ネタ」に収まりません。フィールドの大きさもおかしいし。ブログなどでの簡単な活用は難しいですが、クラブレベルでのプレーの分析、選手達のオフ・ザ・ボールの動きを確認しようという時にはすごく便利なツールなんでしょうね。真面目にプレーを解析するぜ、という一般の方にはとても有益です!高校生、大学生のサッカー部の方とか、研究してみてはどうでしょう。
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