2016年5月3日火曜日

【小ネタ】 トラッキングデータの計測方法

トラッキングデータの計測方法(仕組み)の推測

レスターの岡崎選手のスプリント回数の記事や、Football Channelのトラッキングデータについての記事を読んで、自分も一言書きたくなりました。ただ、前提となるトラッキングデータの計測方法の原理について説明した日本語記事を探せなかったので、自分で説明(推測)を書いてみました。たぶん三角測量でしょ。間違ってたらごめんなさい。でもこういう記事は、Jリーグのオフィシャルデータサプライヤーであるデータスタジアム社が書くべきだと思います。


前述のようにサッカー関連では、Jリーグが採用しているトラッキングデータの計測システムについて、詳細な記事はありません。皆さん「軍事技術の転用」をキーワードに記事を書いているようです。個別のチームや他分野(ラグビー)ではGPSを使ったトラッキングシステムの紹介記事もありますが、J1のトラッキングシステムとは別物です。いろいろ調べたあげく、以下の記事を参考にしました。

コトバンクの記事、トラッキングシステム
Sportsnaviの記事、Jリーグが取り入れた軍事技術 革命の鍵、トラッキングシステムとは!?

Sportsnaviの記事では、トラッキングデータの計測システムがごく簡単に説明されています。この内容を引用します。
“このシステムは、軍事技術のミサイル自動追尾システムを応用したもので、メインスタンドに設置された2台のカメラが、選手やボールをトラッキング(追尾)し、1秒ごとに25フレームの細かさで、ピッチ上のそれぞれの座標を取得する。”
トラッキングデータとは、ここで書かれているように、毎時の位置座標データです。その計測原理で重要な点は、赤文字にした2箇所です。以下、順に説明していきます。


2台(複数台)のカメラによる計測

トラッキングシステムでは、ボールと選手達22人(+審判も?)の動きを2台のカメラで撮り続けます。なぜ2台のカメラが必要かと言うと、ボールと選手達が空中にある状態(地面から離れた浮き球のパスやジャンプ)も正確に認識するためです。何を言っているかわからないと思いますが、順に説明していきます。

1台のカメラと、地上のボールと選手達

もし仮に、ボールと選手達がフィールドに接して移動を続けるなら、つまりグラウンダーのパスばかりなら、トラッキングデータは単に2次元の位置座標データになります。この場合、1台のカメラでフィールド全体を撮り続ければ、ボールと選手達の位置情報を十分に取得できます。

1台のカメラから見た選手の位置の推測。2本の点線は、サイドライン、ゴールラインと並行。

フィールドの真上から撮影でもしない限り、例えばメインスタンドから撮影すると、フィールドは長方形から歪んだ形になります。フィールド上の各ラインとの位置関係から、ボールと選手達の位置座標を計算する事ができます。

2台のカメラと、空中のボールと選手達

一方、ボールと選手達が空中にある場合、1台のカメラから計算した位置座標は正しくありません。1台のカメラのみでは、ボールと選手達がフィールド上のある位置の空中にいるのか、それとも地面に接した別の位置にいるのか、区別ができないからです。
位置Bからジャンプすると、位置Aにいると誤認してしまう。

このため、2台(複数台)のカメラが必要になります。ボールと選手達が地面に接している場合、2台のカメラの画像から計算した位置座標は、若干の誤差のもとで常に一致します。しかし、実際の試合ではボールと選手達が空中にいる場合もあります。離れた位置にある2台のカメラからは、空中にいるボールと選手達が別々の位置に写ります。2台のカメラの位置が既知ならば、ボールと選手達が地面から何m離れた空中にいるのか、計算から求める事ができます。(たぶん三角測量の応用)

位置Aにいる選手を、離れた位置にある2台のカメラで見ると、こんな感じに見える。ラインの歪み方が異なる。位置Aから選手がジャンプすると、2台のカメラからは異なる位置Bと位置Cにいるように見える。それらしく見えなくてすいません。

おそらく実際は、ボールと選手達の地面からの高さも、常に計算されているはずです。我々がデータとして目にするのは、フィールド上の2次元表示ばかりですが。

なお、2台のカメラのみの場合、ボールや選手が他の選手の身体に隠れてしまう場合もあるように思いますが、どうなんでしょうね?(´・ω・`)それが疑問だったので、「2台(複数台)」と書きましたが、補間すればOK?

1秒毎に25フレーム

この25フレームの目的は、1秒を細かく分解して、ボールと選手達の動き(主にボール)を追う事です。サッカーでは、ボールの動きが、1秒もたたずに急激に方向を変える事があります。そのようなボールの動きを十分に分解するために、1秒間に25フレームという、日常生活から著しく離れた時間間隔での撮影が必要になります。


トラッキングデータの計測方法は、こんなものだと思います。詳細な記事の出現を待ちます。


その他の参考ページ
jleague.jp プレスリリース、Jリーグトラッキングシステムの導入を決定
データスタジアム社トラッキングシステム(サッカー)のページ



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2016年5月10日、図1、2、3を追加。



トラッキングデータとスプリント回数についての記事一覧

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