2018年6月26日火曜日

【小ネタ】 Attack origin の計測方法の推測


注意、マニア向けの記事です。

本記事では、「Attack origin」と呼ばれる図示の、計測方法について推測します。

私の推測であって、実際の定義と一致するかは不明です。

この図は、ロシアワールドカップで公開されている Tracking Statistics に含まれています。(参考記事、【小ネタ】ワールドカップの公開データ紹介


赤枠内が今回の主題である Attack Origin 。





まず疑問、「これって、Attack Origin 以外の名称なかったかな?」

他のスタッツでも、このように左サイド、中央、右サイドに分けて、攻撃の割合を図示する画像を見た気はするのですが、ちょっと調べられませんでした。

fifaのサイトにも書かれていません。

「Attack Origin とは」で検索しても、よく分かりま千円。

日本語なら「攻撃領域」くらいでしょうか?

結論として、「Attack Origin とは、そのチームがボールを進めようとした領域の割合」、です。



推測


私が推測するに、Attacking Origin の定義(計測方法)は、こうです。

”中盤の左サイド、中央、右サイドで、ボールが相手エンド方向に進んだ距離の割合。”

この記事では、「中盤」は、フィールドをゴール方向に3分割した時の真ん中の領域、として定義します。(英語なら midfield )

一方で、「(フィールド)中央」は、フィールドをサイド方向に3分割した時の真ん中の領域、として定義します。( the center of the field, theの用法に不安が)

あるいは、「計測領域ならフィールド真ん中の〇〇m間の領域ならもっと適切」という意見(事実?)もあるでしょうが、ここでは単純にフィールドを3分割した領域を考えます。


問題となるのは次の2点でしょう。


  • 「中盤」
  • 「ボールが相手エンド方向に進んだ距離の割合」




問題1、なぜ「中盤」か?


なぜ中盤に限定する必要があるのか、なぜ計測する領域をフィールド全体として定義しないのか、を考えます。

簡単に言えば、ボールの進路は、ゴールに始まりゴールに終わるため、ゴール近辺を含めるとどうしても中央の割合が大きくなります。

自陣のペナルティエリア付近(いわゆるディフェンシブサード)を入れると、どうしてもGKを起点として進むボールが増えるため、戦術的な意味合いとは関係なく、中央の割合が増えます。

相手陣内のペナルティエリア付近(いわゆるアタッキングブサード)も、ボールが相手ゴールに向かうため、必然的に中央の割合が増えます。

これらの理由によって、「そのチームが攻撃をどこから仕掛けたのか(仕掛けようとしたのか)」を明らかにするためには、フィールドの中盤で計測する事が比較的適切だろうと考えられます。



問題2、「ボールが相手エンド方向に進んだ距離の割合」?


トラッキングデータから分かる事は、データそのものである位置情報と、その時間差分である速度です。

(さらに時間差分すると加速度が出てくる道理ですが、それは置いといて)

ただ「 Attack Origin 」という言葉の意味を考えると、それが示すべきものは「相手チームがどこから仕掛けてきたか」です。

とすると、「その領域でボールが進んだ距離を積算」する事が最も適切なように思います。

それぞれの領域でのボールの移動速度(パス速度)の平均値や積算値、は趣旨と違うでしょう。(パスの長短によって速度は違う)

あるいは例えば、「それぞれのサイドにかけた平均人数の割合」は、守備側が同じだけの人数をかければボールが進まない事はあるので、これも違うでしょう。

選手達の移動距離の合計や、選手達の平均移動速度は、そのチームが仕掛けていた事は示しますが、実際にボールが動いた事を保証しません。

これらの理由から、「その領域でボールが進んだ距離の積算」が最も単純で分かりやすいと思われます。


「その領域でボールが進んだ距離の積算」という定義は、「何を知りたいか」によって少し変わってきます。

2種類の定義が考えられます。


  • ボールを保持している間の、相手エンド方向へのボールの進行距離の積算。
  • ボールを保持している間の、相手エンド方向を正とする、ボールの進行距離の和。


相手エンド方向を正とした時、前者の定義は正値のみを積算し、後者の定義は負値も積算します。

前者の狙いは、チームが戦術的に意図している領域を知る事です。

そのために、「そのチームがボールを進めた距離だけ」を積算します。

しかし、自分たちがある領域でボールを進めたいと思って何度もトライしても、相手の守備が固くて、ボールを戻さざるを得ない状況は普通に考えられます。

そこで、自陣エンド方向へと戻った距離も積算して、実際にボールを進める事ができた距離を測定します。

これが後者の狙いです。



「 Attack Origin 」では、おそらく前者の定義(ボールを進めた距離だけの積算)が採用されているはずです。

理由は、「後者の定義でありえるマイナス表示を見た事が無い」からです。(非常に安易な理由ですが)

そして「 Attack Origin 」で示されている事は、「そのチームがボールを進めようとした領域の割合」だと考えられます。

これは、「実際にボールを進める事ができた領域の割合」とイコールではありません。


繰り返しますが、これは私の推測です。



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