2018年5月22日火曜日

【書評】サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論 その1

この記事では、「サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論」の体裁について評価します。

多少キツイ言い方ですが、「サッカー守備戦術の教科書」の名には値しません。

タイトルが「4-4-2ゾーンディフェンス 松田浩の言葉」くらいなら納得できました。

刺激が強かったらすいません。




初期評価としては、コレ無理/(^o^)\


これまで、サッカー戦術を理解したくて何冊か本を読みましたが、基礎的な教科書として全国で数十年程度の実用に耐えられそうなものは見つかりませんでした。

過去に活躍した有名選手の名前がタイトルに付いていても、信用はできません。

この本については、タイトルやツイッターなどでの肯定的なコメントにつられて期待して読み始めましたが、松田さんの4-4-2の守備理論を議論する以前に、本書の内容について教科書を名乗っている事に不満を感じました

しばしば読む事に苦痛を感じました。

私は読み切ってない事を表明しておきます。

人間の情報処理能力はそんなに高度ではありませんし、本を読む時間も限られています。

不要な話が多すぎます。


本書の大部分では、松田さんの言葉(会話の内容)が文字に書き起こされています。

この時点で教科書として無理があります。

執筆者の鈴木さんの仕事として、松田さんの言葉から必要な情報を抽出し、それを理論立てるべきでした。

私達が義務教育高等教育で読んできた教科書は、研究者達の想いや苦労話が満載だったでしょうか?

およそ教科書と呼ばれる書物の目的は、知識の説明や技術習得の補助を効率的に行う事です。

本書はこの点を全く満たしていません。



章立てについても、不満に思います。

各章の内容は以下の通りです。

  • 第1章、海外のトップリーグの守備の事例。
  • 第2章、ゾーンディフェンスの意義。
  • 第3章、ゾーンディフェンス理論のコア。
  • 第4章、ゾーンディフェンスの多様な実践例。
  • 第5章、日本サッカーへの期待。

とりあえず、上記のゾーンディフェンス=4-4-2と思って下さい。

第1章と第2章の半分くらいはイントロとしては不要です。

ここの記述が、本論である第3章までの道のりを遠くしています。

第4章は、カンゼン社関連の雑誌インタビューの再録です。

実際の試合における(ゾーンディフェンスの)攻防を松田さんが解説しています。

これが100ページ近くあって、本書の1/3を占めています。

さすがに冗長過ぎます。


改訂案

  • 第1章、ゾーンディフェンスの意義(マンツーマンとゾーンディフェンス)。
  • 第2章、ゾーンディフェンス理論のコア。
  • 第3章、ゾーンディフェンスの多様な実践例。
  • 第4章、海外のトップリーグの守備の事例。
  • 第5章、日本サッカーへの期待。

私なら、章立てをこのように修正します。

書き直すとして、前提条件は、松田さんの言葉からの情報の抽出と無理のない展開です。(これに松田さんの許可がおりないなら、教科書として無理)

この作業で、時間はかかりますが、文字数は半分前後になるでしょう。

第1章のゾーンディフェンスの意義は半分ほどに削ります。

第3章の実践例のインタビュー記事も多すぎるので削ります。

実際の試合ではボールも選手達も自由に位置を取れるために、様々な状況が起こり得ますがその全てに付き合うのは不可能です。

起こりやすい状況と、普通に考えると起きそうにない状況を載せます。

第2章のコア部分はもっと増やしたいですね。

第3章の実践例から読み取れる共通項、応用範囲の広い項目を探して第2章に回したい。

第4章では、4-4-2の限界を踏まえた上で、特異な戦術と選手達による攻防を紹介、が適当でしょうか。


結論


繰り返しますが、タイトルが「4-4-2ゾーンディフェンス 松田浩の言葉」くらいなら、この内容でも、インタビュー再掲が多くても、まだ納得できました。

サッカー関連の普通の読み物なら、それで良かったです。

ただ「教科書」を名乗って、このレベルは許容できません。(この書籍に限った話ではないのかもしれませんが)

本書の購入のオススメ具合は、う~んどうなんでしょう?

第3章と付録が本書の真髄ですが、情報が未整理のため余計なモノも多い、という評価です。(玉石混交そのもの)

まともに時間をかけて、松田さんの会話文から情報を抽出して理論立てて、余計な文章を削れば、付録を入れて100ページ程度の本で、時間経過に耐えられるロングセラーになっただろうと推測します。



amazonのページ読書メーターのページでは、「何度も読みたい」などの肯定的な評価が多くあります。

サクラもいるでしょうが、真実もあるでしょう。

繰り返しますが、私の評価は玉石混交です。

読了したみなさんは不満はありませんでしたか?

サッカーを本業としない方々の何割かは、それぞれの本業の中で様々な文章(書類、マニュアル、図書)を使って情報伝達、情報交換をしているはずです。

仕事の中で、時間のかかるダメ文章、分かりやすい良い文章をシビアに判断しているはずです。

本書は良書でしょうか?良いマニュアルの類でしょうか?


ゾーンディフェンスそのものについては、次の記事で評します。(→書評その2


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