動機は、以前の記事で紹介したワールドカップとJリーグの走行距離とスプリント回数の違いです。
比較の結果、Jリーグは走行距離が長く、ワールドカップや他のリーグではスプリント回数が多い事が分かりました。
では、Jリーグは歩き回っているのか?というと、試合を見ていれば当然そんな事は無く、この事実をどう説明すべきかと疑問が湧きました。
この疑問の答え(推測)ですが、「Jリーグでは、ランニング程度の速度での移動が非常に長い」、と思われます。
参考記事
・ワールドカップで公開されているデータの紹介、「【小ネタ】ワールドカップの公開データ紹介」
・ATS の紹介、「【小ネタ】Activity Time Spent とは」
・いくつかの試合でのATS の比較、「【日本代表】 日本ロシアドイツなどの「Activity time spent」の平均値」
ワールドカップの典型的な ATS の数値
次の表は、典型的な ATS の値を元に、走行距離を計算したものです。
表1、典型的な Activity time spent (ats) の値と走行距離。 |
各ゾーンの平均的な速度(vel)を、それぞれの速度の範囲から計算しました。
典型的な ATS は、典型的な2種類の値、(zone 1, zone 2) = (0.7, 0.2) と (0.6, 0.3) としました。
zone 3 以上については、zone 3 を8%、zone 4 を2%、zone 5 を0%と仮定しました。
zone 5 が1%の選手もいますが、せいぜい「1%」なので、まぁ大勢に影響は無いかと。
後は、これらの値と1.5時間(90分)から各ゾーンでの距離(dis)を計算し、さらに積算します。
すると、(zone 1, zone 2) = (0.7, 0.2) が10km近く、(zone 1, zone 2) = (0.6, 0.3) が11km近い値となりました。
データを見ていると (zone 1, zone 2) = (0.7, 0.2) に近い選手達が多く、ワールドカップの平均走行距離が10km程度である事に一致します。
日本代表で言えば、だいたい長友香川が(zone 1, zone 2) = (0.6, 0.3)で、走行距離は11km程度、他の選手達は(zone 1, zone 2) = (0.7, 0.2)で、走行距離が10km程度、の印象です。
一つ注意点があります。
今回の計算方法ですが、速度範囲の平均値を使って計算するという事は、選手達がその速度範囲で偏り無く移動しているという仮定につながります。
加速と減速は必ず繰り返すのでzone 2 以上の速度範囲については問題ないと思っています。
しかし、zone 1 については、選手達が止まっている時間が長ければ、この見積もりは過大評価となります。
JリーグのATSを推測
平均走行距離が11kmだというJリーグのATSの計算のため、一つ大きな仮定を入れます。
以前の記事で、「Jリーグのスプリント回数はワールドカップの半分程度」とあったので、zone 3 と zone 4 の%を半分の値にします。
で、後は zone 1 と zone 2 の数字を調節するのですが、次のようになりました。
表2、JリーグのATSの予想。 |
結果、zone 1 の値は52%、zone 2 の値は41%と、ワールドカップよりも一回り配分が進んだ値の組み合わせとなりました。
(zone 1 は平均速度が 3.5km/h で、90分かけても10kmに満たないため、zone 1 を減少させ、 zone 2 を増やす事になります。)
この数字が示している事実を、「運動強度が激しくない」と見るのか、「監督の想定する戦術をよく実践できている」と見るのか、どちらでもないのか両者なのか、議論の余地は大きくあるでしょう。
Jリーグには13km前後走る選手達もいますし、夏には高温の中で試合をする事になります。
Jリーグの監督コーチたちには、このような数字を可能な限り活用して、Jリーグのサッカーを進化させてほしいと思います。
攻撃であれ守備であれ、読みが悪くてオフ・ザ・ボールの動きができないと、ランニング以上のスプリントでボールを追いかけるハメになる、というイメージです。
今回の記事は私の推測ですが、データを持っているデータスタジアムにとっては解析すればすむ話です。
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