2018年7月28日土曜日

公益財団法人としての日本サッカー協会の情報公開



長いです。


本記事では、公益財団法人としての日本サッカー協会(以下、JFA。法人コード A017739)について述べます。

基本的な問題は、情報公開の少なさ、不透明さ、ですね。

犯罪ではありません。各団体の裁量の範囲ではあります。でも、丁寧ではありません。

私は日本天文学会で評議員をしていた経験があるのですが、その時の情報公開のやり方と比べると、日本サッカー協会の情報公開のやり方は、国民に丁寧に情報公開しているとはいい難い、という印象です。

私の印象に依存しなくても、ネット上での各公益法人の情報公開を見ると、やっぱりJFAが公開している情報量は少ないと思います。(本当に色々な公益法人がある)

この公開されている情報量の少なさから、お金の流れへの不満不信感も出てきます。


内容は次の通り

  • 公益法人とは?
  • JFAの役員報酬額
  • 登録料(収入)
  • 理事会と評議員会







公益法人とは?


公益法人(公益財団法人、公益社団法人)については、以下のページに色々書いてあります。

公益法人information(内閣府)

公益法人自体についてはここでは書きませんが、このサイトには「理事必携」「評議員必携」という、役割を簡潔に記し、責務に該当する法律の条項を記したPDFファイルもあります。

税制上の優遇措置を与えているので、行政側としても不祥事を起こされてはたまらないと考えているのでしょう。(あるいは、不祥事の際に俺たちは悪くないよという行政側の防御策)


このサイトには、「事業報告等の閲覧請求」というページがあり、電子化されて行政庁に提出された書類を、インターネット上で閲覧する事ができます。

ただし、過去5年間のみ有効です。(多分法律で定められた保持期限)

ただしただし、Internet Explorer でしか動きません!(そんな注意書き書いてないやんけ!)

よって、日本サッカー協会のホームページには無いけど提出はされている書類、も閲覧可能です。



役員報酬が明示されていない件


他人の給与額(報酬額)を知りたいという欲望は悪趣味ですし、全ての公益法人の給与額を知っていても自分の人生が楽しくなる訳ではありません。

ただ、公的な組織でそれが情報公開が不十分になっていると、邪推の原因になります。

(「人間は見たいものを見る」のと「ストレス発散」で、人間がやりがちな邪推です)

最近では、ハリルホジッチ元監督が更迭された際に、コメンテーターをやっている一部の元選手達が協会を全面肯定したために、「この人達はなぜこんな行動を取るのか?」と疑問が湧いた訳です。(もちろん私も)

で、邪推の原因となった協会役員の報酬額ですが、結局正確な額は調べきれませんでした。

ただ、平成29年中の理事、評議員、監査の報酬の総額は、1億2千万弱だと分かりました。


まずは、公開されている予算書(収支予算書総括表)を見たのですが、ひと目でそれと分かる項目はなく、「管理費」としてまとめられているようです。

この管理費の詳細な説明は見つけられませんでした…。

こういう不明な点が良くない。


次に、JFAの定款を調べました。
(役員及び会計監査人の報酬等)
第31条 理事及び監事に対して、評議員会において別に定める総額の範囲内で、評議員会において別に定める報酬等の支給の基準に従って算定した額を報酬等として支給することができる。
2.会計監査人に対する報酬等は、監事の過半数の同意を得て、理事会において定める。

この評議員会が定めた支給基準はどこで公開されているのか?、全く分かりません。

(公益?)法人の中には、理事会と評議員会の議事録を電子的に公開しているところもありますが、JFAでは公開されていません。

定款を読むと、理事会の議事録については事務所(文京区)で閲覧できるそうです。


で、上記の公益法人のページを調べてみると、公開されているパンフレットの中に、「公益法人のガバナンス・情報開示」の一環として役員報酬の基準を情報公開するように書いてあります。

検索してみると、他の公益法人では公開しているところもあります。

例、公益財団法人日本関税協会役員等及び評議員の報酬等並びに費用に関する規程

正確な金額は書いて無くて、上限が書いてあるものがちらほら。

正確な額は理事会で決定するというのが定番なようなので、理事会の議事録には書いてあるのかもしれません。


で、上記の公益法人のページを色々調べていると、事業報告書などの閲覧請求ができる事が分かったので(事業報告等の閲覧請求)、調べてみました。

24時間365日申請可能で、フォームから申請して1分?もすれば、閲覧可能な電子書類のページのリンクが送られてきます。

で、ここに最近の「役員及び評議員の報酬並びに費用に関する規程」というファイルがあったのですが、まぁこれは規定なので「理事会で何円に決定した」とは書いてありません。

その代わり、役員報酬表(月額)というものがあって、その最高は250万円でした。

なので出張旅費とかを除けば、年収入の最高額は3000万円となります。(これを上限にしてるという仮定のもとですが)


さらに、このサイトで色々調べている最中に「【別紙1:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第28条第1項第2号に掲げる書類】」という書類を見つけました。(どうやってたどりついたかは覚えてない)

より簡単には「運営組織及び事業活動の状況の概要等について」という表題がついています。

このファイルの中身は、「公益法人としての活動のチェック表」みたいなもののようで、最後に「(9)事業の運営に関する行政庁からの勧告又は命令の有無」とあります。

その一つ前に「(8)理事、監事及び評議員の報酬等の額」とあって、平成29年中の報酬総額が書いてありました。


結局、正確な報酬額は不明ですが、報酬総額は分かりましたし、評議員も各団体からの代表なので、理事と監事の常勤の人数が分かれば、だいたいの額はでるでしょう。

おそらくは1000万円の桁で、まぁそんなもんだろうと思います。




登録料について


次に登録料についてです。

公開されている予算書を見ると、事業収入と事業支出はほぼとんとん(たいてい1億円の差)で、支出の「管理費」に主に対応するのが登録料収入となっています。

チーム/選手 登録制度概要

登録料のページを見ると、みんな金払え!チームとしても金を払え!という勢いです。

選手として払っているのだから、チームとしての登録料納入は不要だと思うのですが、皆さんはどう思われますか?

しかも、Jリーグの選手・チームから12歳未満のチームまで?

この範囲と金額の変化はなんなんでしょうね?印象としては、消費税みたいなものです。広く浅く、強い不満が出ないように。


またこんな事も書いてあります。「皆様からご納付いただく登録料は都道府県FAへ分配し、より良い大会運営やサッカー普及事業に活用されます。」

JFA会長あいさつ」を読むと、地域の自立的発展とかかっこいい事言って分配金を出すと書いてあります。(会長選の集票活動の一環でしょうが)

では、各都道府県FAは実際にもらっているのか、調べてみました。

公益財団法人愛知県サッカー協会のページを見ると、事業報告なんかの電子公開については全然ダメ。(公益法人なんだから真面目にやるべき)

定款だけは公開されていました。

理事会の議事録は事務所備え置きとの事。

一般社団法人長崎県サッカー協会は、事業報告書や収支計算書を公開しています。(情報公開頑張ってますよ、公益法人でもよくないですかね?)(エクセル?から印刷したものをスキャンしてPDFにしなくてもいいような…)

「補助金等収入」に「47FA公益目的事業費」とあり、これがJFAからの補助金でしょう、多分。

こちらの協会で登録料収入と登録料支出があるので、JFAに上納してそれを再分配してもらう形でしょうか?

でも、これって再分配額決定はJFAの権限?JFAへの上納分だけで20億円? なんかすごいぞ


なお、他の都道府県の協会は調べていません。



理事会と評議員会


公益法人に関する法律では、財団法人の評議員会は最高議決機関であり、理事会を監督牽制するためのもの、という位置づけです。

しかし、現状、評議員会が年1開催で、理事会は毎月開催なのは、監督する気が無いとしか思えません。

評議員会のメンバーは多すぎで、47都道府県の協会+J1J2の一部?+αの機関となっています。

評議員会が年に1日のみの開催でこの人数の多さだと、監督・助言機関として実質機能せず、ただの承認機関にしかならないでしょう。

FIFAの主導によりこの人数になったらしいですが、正直酷い様だと思います。

FIFAの求める会長選挙の選挙権を持つ評議員と、日本の法律の定める公益財団法人の評議員会とで、機能と目的に大きなズレがあるのでしょう。

この辺は会長選に絡んで権限的なねじれもできているようです。



一方、毎月開催の理事会で処理される報告事項の件数の多さには驚きました。

理事会の議事録は公開されていませんが、決議事項・報告事項は公開されています。

理事会の下の部会で処理する要件を増やすか、書面報告のみで済ませる要件を増やすべきだと思います。

この理事会と評議員会の仕事量の落差は、組織として無理があるようにしか見えない…。



私が要求するというのもあれですが、一つ要求したい事は、「まともな議事録の電子公開」です。

上記のように理事会の決議事項・報告事項は公開されており、理事会で使ったであろう資料も見る事ができます。

しかし、議論をどのように行ったかという正式な議事録は、電子的に公開されていません。

理事会運営の規約を読むと「事務所備え置き」となっています。

今の時代に「事務所まで見に来い」という姿勢は無いと思います。

登録料を収めて、さらに試合をする全国の選手達・関係者達、さらには国民あってのJFAなのではないでしょうか?

「公益法人がみなやってる」とは私には言えませんが、「公益法人 議事録」で検索をかけると多くの法人が理事会と評議会の議事録を公開しています。



最後、ずーっと言われている事ですが、ワールドカップであれ、オリンピックであれ、それまでの4年間の男子代表チームの総括、なんとかならないのでしょうか?

文字化して、一般の意見は聞かずとも、JFAから離れた有識者の意見を聞かないと、どうしても「なんとなく」のままで時間は進んで行くでしょう。

女子代表チームについては、公開資料のページで各大会のテクニカルレポートが公開されています。




結論として、その予算規模、公益性から考えて、JFAの情報公開は酷くおそ松です。

誤字をそのままにしておきたくなるくらいです。

情報公開は長崎サッカー協会くらいに丁寧にやるべきだと思いますし、JFAの理事会と評議員会の仕事の対比は酷いレベルです。

将来的にどこかでトラブルが発生しても当然の事でしょう。




20180730、誤字脱字を修正。言葉足らずを修正。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿

サッカーにおけるボロノイ図使用の制限、ボロノイ図とは?

本記事の主張は、「 サッカーではボロノイ図を無制限に信頼しないでね 」、です。 特に私が危惧しているのは、盲目的な信頼によって、ボロノイ図が選手批判に使用される事です。 事実として、選手たちが動いてない時(動きが悪い時)ほど、ボロノイ図は各人がカバーできる領域に近くなり...