簡単に結果を言えば、走行距離ではJリーグが上回り、スプリント回数ではワールドカップの試合では2倍近い数字となりました。
この記事に続く次の記事では、この走行距離とスプリント回数を反映するようなJリーグの走行速度分布(ワールドカップの Activity time spent)を推測し、ワールドカップとJリーグの違いの原因を議論します。
ワールドカップとJリーグの走行距離
現在開催されている 2018 FIFA ワールドカップでは、ボールと選手達のトラッキングデータから、選手たちの走行距離や速度分布、選手間のパス本数などのデータが得られ、公表されています。(参考記事、【小ネタ】ワールドカップの公開データ紹介)
今回の記事の動機は、Jリーグで公開されている走行距離(選手別やチーム合計)が、ロシアW杯で公開されている値よりも全体的に長い事です。
2018年7月4日時点のJ1リーグ、出場選手の合計走行距離(チーム平均値)。jleague.jp より。 |
J1のチーム平均をとると、1試合の走行距離の合計は約115kmになります。
普通のGKの走行距離が5km未満な事を考えると、一人の選手の走行距離は約11kmでしょう。
続いて、ワールドカップにおけるいくつかの試合の走行距離(Total Covered Distance)です。
ワールドカップのいくつかの試合のチーム全体の走行距離。TCDは、Total Covered Distance の略。TCDの左は、Match Factsで公開されているPDFから集計。TCDの右は、Statisticsで公開されている数字。Tempは、Match Facts で公開されている気温。J2とP2は日本とポーランドの意味。 |
表には載せていませんが、日本対セネガルでは、日本105km、セネガル102kmでした。
表に載せた数字以外に、ワールドカップのスタッツ(Statistics)のページを見ると、どうも100kmから105kmが頻繁にでてくる範囲のようです。
Soccer D.B.の集計によると、大会途中ですが、全チームの平均走行距離は104kmとの事です。
GKの走行距離を除けば、フィールドプレイヤーの走行距離は約10kmでしょう。
従って、J1の平均走行距離はワールドカップの平均走行距離に対して10km程度長く、個人レベルでは1km長くなっています。
今回、走行距離でJリーグがワールドカップを上回っている事には驚きました。
日本対ポーランドのように、ワールドカップ全体が高い気温の中で行われたのかと思いましたが、表中の試合について公表されている気温データを調べた結果、どうも気温の影響は無さそうです。
従ってこれらの走行距離は、ワールドカップの傾向を示していると言って良いでしょう。
一つ注意点ですが、表中の2種類の合計走行距離を比較して分かるように、日本対ポーランド戦の数値はホームページ上の数字とPDF内の数字が大きく乖離しています。
Tracking Statisticsのデータが正しいだろうとは思いますが、なぜこんなかけ離れた数値が入力されたのかは不明です。
ワールドカップとJリーグのスプリント回数
続いて、スプリント回数を比較します。
2018年7月4日時点のJ1リーグ、1試合の合計スプリント回数(チーム平均値)。jleague.jp より。 |
J1のチーム平均をとると、1試合のスプリント回数の平均は、169回でした。
これから夏本番という事もあり、今後はこの数値は若干減少すると考えられます。
一方、先に挙げたワールドカップの表を見ると、幅はありますが、300前後といったところでしょうか。
J1のスプリント回数の倍近くあります。
スプリント回数については、以前から言われていた傾向ですが、大きくは変わっていません。
だからといって、Jリーグのサッカーは点が入らないわけでもありませんが、「なんらかの向上の余地」がある事は間違いないと思います。
それが何なのか、どこをいじれば良いのか、次の記事で考えます。
続きの記事、【小ネタ】 ワールドカップのデータから推測されるJリーグの走行速度分布
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