2017年4月4日火曜日

サッカー、ラグビー、競技人口、フィジカルコンタクト

今回の記事では、サッカーとラグビーの競技人口の違いの原因について考えました。

この記事では、競技人口の違いの最大要因を、ルール上のフィジカルコンタクトの扱いの違いと考えました。(これがそれぞれのスポーツの魅力になっている訳ですが)




イントロ


なぜこのような違いに興味が出たかと言うと、たまたま読んだ国土交通省作製の2019年ラグビーワールドカップについての資料(ラグビーワールドカップ2019日本開催が意味するもの)が原因です。

この資料中に、こんな一文があります。

ラグビーワールドカップは、夏季オリンピッ ク・FIFAサッカーワールドカップに次ぐ、世界3大スポーツ祭典と呼ばれている大会。 世界で述べ40億人が視聴する大会

ラグビーファンには失礼ながら、これらの表現と数字を見てかなりびっくりしました。

国土交通省謹製の資料の割には数字の根拠が書かれていませんし(どの競技の主張も似た程度の信頼性かもしれませんが)、正直「う~ん?」という感じです。

この語句「世界3大スポーツ祭典」で検索すると、以下のYahoo知恵袋の記事を見つけました。

世界三大スポーツイベントといえば サッカーワ…

この記事に出てくるベストアンサー、「3番目のスポーツイベントは無い(上位の2つが突出しすぎている)」という答えが私としてはしっくりきます。

なお、その答えの中では3位候補としてラグビーワールドカップとツール・ド・フランスが挙げられていました。



「3大」の定義を視聴者数で考えると、単一競技としてはサッカーワールドカップが群を抜いています。(オリンピックは複数競技の集合体なので)

視聴者数の要因を考えると、その競技の競技人口と、メディアへの露出具合の影響が大きいと考えました。

競技人口が多いほど、その関係者の人数も多く、さらには競技者や関係者の家族や友人などの人数も増えます。(競技自体の面白さと競技人口の関係は、鶏と卵の関係でしょう)

これらの人数が多ければ、話題にのぼる回数、ニュースになる回数も多くなり、無関係な人達の注意をひく頻度が増えます。

あるいは世界に通用する天才的な選手がいたり、協会がメディアと協力する事によるメディアへの露出具合も、国内の視聴者数を増やすでしょう。



サッカーとラグビーの競技人口を調べてみると、サッカーの競技人口はFIFAの発表によると2億7千万人、ラグビーの競技人口は800万人弱となっています。

30倍ちょっとの差です。

日本に限定すると、サッカー競技人口(男子)は2015年度に90万人強(サッカー選手登録数, JFA)、ラグビー競技人口は2014年に11万人強(ラグビーの競技人口と世界ランキング、社会実情データ図録)、と8倍程度の差です。

もとは「フットボール」を起源とする競技でありながら、この差はなんなんだろうと疑問に思いました。

私の推測として、第一の原因はフィジカルコンタクト、第二の原因は普及を含めたそれぞれの歴史(アマチュア主義、プロ化、ワールドカップ)です。

以下、フィジカルコンタクトについて記します。

記事内容が当初の想定より長くなったので、普及の歴史の違いは割愛します。




フィジカルコンタクトの違い


サッカーとラグビーの競技人口差の最大要因は、その競技がフィジカルコンタクトを積極的に認めるか否かです。

フィジカルコンタクトを認めるスポーツ競技では、どうしても身体の大きい選手、体重の重い選手が有利になる傾向があります。

精神論など関係なく、小柄な選手と大柄な選手がぶつかり合えば、弾き飛ばされる、あるいは怪我をする確率が高いのは小柄な選手です。

フィジカルコンタクトを主体とする1対1の競技、柔道、ボクシング、レスリングなどでは、勝負における技術や身体能力の比重を高めるために、体重別の階級制が採用されています。

しかし、ラグビーではそのような体重別の階級制は採用されていません。

したがって、ラグビーで勝率の高いチーム、優秀な選手達というのは、どうしてもより大柄な選手達になります。

大柄になりえる高身長の人口は相対的に少なく、よってサッカーに比べてラグビーの競技人口が少なくとも自然な話です。

(より人口の多い、身長の低い人々をラグビーの競技人口に加える事は可能ですが、身長の低い人々では怪我をする確率、試合に負ける確率が高いため、彼らはラグビーを楽しめず、また競技の質を上げる事にも貢献しません)



ここで日本人の身長分布、サッカー日本代表の平均身長、ラグビー日本代表の平均身長、ニュージーランド代表オールブラックスの平均身長を見てみましょう。

身長180cm以上の日本人男性の割合は7%弱、…(はぴらき合理化幻想)
サッカー日本代表「サムライブルー」の身長体重は?(2016年度版)(スクスクのっぽくん)
ラグビー日本代表選手(男子)の身長体重は?(2016年度版)(スクスクのっぽくん)
ラグビー日本代表とオールブラックスの体格差(情報の宅急便)

「身長180cm以上…」の記事の中央辺りに書かれている「身長5cm単位の分布図」のグラフを見ると、175cm前後の割合は18.43%、180cm前後は5.60%、185cm前後は0.90%と、その割合が大きく変化している事がわかります。(各数値は文部省の統計資料、日本人男性の17才時点での身長分布に由来)

真ん中の2つの記事を読むと、2016年のサッカー日本代表の平均身長は178.3cm、ラグビー日本代表の平均身長は181.9cmです。

サッカー日本代表では、GK陣、吉田麻也選手を始めとする一部のDF陣、マイク・ハーフナー選手が平均身長を押し上げています。多くのフィールドプレイヤーの平均身長はこれより低くなります。

「身長5cm単位の分布図」のグラフを見ると、サッカー日本代表とラグビー日本代表の平均身長に対応する人口の割合は、10倍弱程度違っていそうです。

これは、日本のサッカーとラグビーの競技人口の違いと同程度の違いです。

当然ながら、サッカー日本代表とラグビー日本代表の平均身長を、それぞれの競技人口の平均身長とみなす事には無理があります。

ただ一方で、それぞれの競技のフィジカルエリートである日本代表の平均身長から導かれる人口割合の違いが、競技人口のそれに近い事は、とても興味深くはあります。

競技人口の違い、あるいはその限界を考える上で議論の出発点になりそうな数値と言えるでしょう。



最後、おまけとして、ラグビー日本代表とニュージーランド代表オールブラックスの平均身長の差を出している記事です。

最後の記事は2013年の記事なので、2016年の値とはちょっと数字が異なりますが、この記事を読むと、ラグビー日本代表とニュージーランド代表オールブラックスの平均身長は、7cm近くもあるようです。

これは、なかなか覆す事が困難な物理的な差にも思えます。

日本とサッカーワールドカップ優勝国達との差も、なかなか広くはありますが。



結果、体重制限の無いフィジカルコンタクトを原因として、サッカーの競技人口はラグビーよりも多くなると考えられます。(多くなる傾向ではなく、確実に多くなる)

ラグビーなどのフィジカルコンタクトの激しい競技では、その激しさが魅力の1つでありますが、同時に競技人口の決定的な制限にもなっています。



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